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暮らしの中で人に使われるものを作っていきたい

始まりは、江戸時代中期の天明年間(1780年代)。加茂市の桐箪笥製造は、長い歴史を持つ。その伝統を継ぐ工房で家具作りを手掛けているのは、桐を扱って8年目の職人、田村ゆかさん。伝統の技と現代のデザインを融合させた新しいものづくりに、毎日こつこつと打ち込んでいる。

家具職人 田村 ゆかさん

Profile / 1978年生まれ 三条市出身。高校卒業後、東京の美術大学に進学し木工を専攻。埼玉県の家具メーカーで家具作りの経験を積んだ後、Uターン。桐家具工房に就職し、米びつやチェストなどの製造を担当。

「見るもの、飾るものより、人が触り、使うものを」。田村さんが目指すことは、大学時代から変わらない。美術大学では木工を専攻し、卒業制作ではポプラ材でベンチを製作。その後、木材店の家具製作部門で経験を積んで、20代の終わりにUターン。現在の工房では桐を使った箱物家具を手掛けている。「箱物とは箪笥(たんす)やチェストなど主に収納の家具をいうのですが、私は今、主に米びつを担当しています。桐製の米びつは人気で、オーダーが入り続けているので」と、田村さん。

 湿度が高くなると膨張して湿気の侵入を防ぎ、乾燥すると収縮して通気性をよくする性質を持つ桐。まるで呼吸しているかのように湿度調整をする特性を生かして、工房では、米をおいしく保存するための米びつを開発。「桐は熱伝導率も低いので、温度の影響も受けにくいんです。米どころ新潟ならではの製品ですよね」という田村さん。実は、入社までは桐を手掛けたことはなく、加茂が日本一の桐箪笥の生産拠点だということも知らなかった。知っていたら、恐れ多くて就職できなかったかも、と笑う。

「桐はおもしろいですよ。柔らかさ、温かさがこんなに感じられる木材は他にないと思います。仕上げ段階で、角を落とし、なめらかに磨き上げていくと、柔らかさが倍加して優しい感触になるんです」。

 製造の全工程を1人で行うので、できあがった時の達成感はひときわ。「さまざまな技術を身につけられ、やりがいも感じられるので、職人として恵まれた環境だと思います」。

 工房の10名の職人のうち6名が女性。子育て期間のサポート制度や相談をしやすい雰囲気にも恵まれていると田村さん。もうすぐ2度目の産休・育休に入る。「2歳になった上の子どもは桐のベビーチェアを使っています。これから生まれる子どもには、桐のおもちゃを作ってあげたいな」。

 将来は、箪笥のリフォームに携わり、長く使える箪笥の魅力を伝えたいという田村さん。「ここには、桐の特性を熟知し、ハガキ1枚の隙間のために微調整を繰り返す技術や経験を持つベテラン職人がいます。そうした技を私も受け継ぎたい。そして、世代を超えて残るものを作って、桐の独特の文化を伝えていきたいです」と語った。

■田村さんの働く「(株)イシモク」

1973年創業。伝統の桐箪笥の他、桐の特性を活かして、現代のライフスタイルに合った家具や小物を、おしゃれなデザインで発信する工房。「人が使うものを作りたい」と入社を決意。

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