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270年続く伝統の技を次の世代へつなげていきたい

江戸時代から続く染め物の技術を受け継ぎ、伝統的な図柄だけでなく、ポップなデザインや可愛いモチーフも手掛ける染め物職人、野﨑あゆみさん。
他業種とのコラボにも積極的に挑戦し、和雑貨など幅広い商品を生み出している。そのモノづくりにかける思いを伺った。

越後亀紺屋藤岡染工場 野﨑 あゆみ(のざき あゆみ)さん
Profile / 1985年、阿賀野市生まれ。長岡造形大学でデザインを学び、2006年、家業の藤岡染工場に就職。「人の手で染める、風合いや温かさを多くの方に感じていただけたら」と、手ぬぐいや和雑貨を製作。

 野﨑あゆみさんが働くのは、江戸時代に創業した歴史のある染工場だ。今も伝統技法を守り、手ぬぐいやはんてん、和小物などを製造・販売している。「今、手掛ける商品のほとんどは『注ぎ染め』という技法を用いています。まず型を布に重ねてのりを塗り、そこに数回染料を注いでから、水で洗ってのりを落とし、色を定着させて、干して完成。これらを全て職人が手仕事で行っているんです」と説明しながら、水槽でバシャバシャと布を洗う野﨑さん。すると、枝豆の柄がくっきりと現れた。

 染工場は家業ながら「身近にありすぎて仕事のことをよく知りませんでした。大学でデザインの表現方法として染め物を学び、そこから、本格的に勉強し始めたんです」。卒業制作は、れんこん・納豆・長ネギ・豆腐をモチーフにした、4枚の染め物のタペストリー。その中の一つ、レンコン柄を染めた手ぬぐいが、後に職人としての第一作目となる。「私が入社した頃は65歳以上の職人が3人だけ。270年続く技術を途絶えさせるわけにはいかないと、必死で覚えました。それだけにプレッシャーが大きかったですね」。染め物の仕事には、数字で表せないことも多く、「ここはこう、これはこんなふうに、としか言えない。感覚や経験で覚えていく世界」。また、染め上がりは温度や湿度など外的要因にも大きく影響を受ける。「難しいけれど、モノを完成させる達成感が大きな仕事。だから、ずっと打ち込んでこれたのだと思います」。

 今は、8代目の父と兄、若手職人たちと、幅広いジャンルの商品を製作。新潟県内の造り酒屋の印ばんてんや前掛け、企業のそろいの浴衣などに加え、イベント用の手ぬぐい、ファッションブランドや結婚式場とのコラボ商品も続々と誕生。「特に新しいことをしようと考えていません。多くの人たちに伝統を身近に感じて、生活の中で親しんでもらえたらと思って作ってきただけ」とほほ笑む。職人歴13年目の野﨑さんは、今も途上だという。「職人としてはまだまだです。もっとできるはず。確かな技術を身に付けて、それを次の世代に教えていきたいです。また、モノづくりに興味がある若い人たちに、こうした仕事があることも伝えたいですね」。伝統を継ぐ職人の視線は、しっかりと「その先」を見据えている。


■野﨑さんの働く「越後亀紺屋藤岡染工場」

創業は寛延元年(1748年)。「注ぎ染め」という昔ながらの技法を用いながら、手ぬぐい・トートバッグなど、和テイストの布小物を製造・販売。

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